暮らしに会いに
4年経って「住み心地はどうですか?」建築家と建てた住まいを訪問
京都に特注した唐紙はみんな驚くよ。
段差を少なくして、玄関からすぐリビングへ。
近所のみんなが入りやすい家にしてもらった(ご主人)。
風が心地よいタ方5時。ご近所のみなさんがおいしそうな手料理を片手に次々と集まってきます。以前は「子どものお誕生日会」や「お祭り」で、子育てを終えた今は大人だけの「宴会」を楽しむ場所はいつもここ、Tさん家のリビング、4年前に建て替えました。
「新しい家でも、みんなが気軽に寄れるように」と、1階は玄関を入るとすぐにリビング。明るく広いトイレはギャラリーのような作りで、京都三条の「唐長」の京唐紙が飾られています。これは200年前の版木を使い、Tさんが色を選んで刷ってもらった世界で1枚だけの作品で、 長寿繁栄のシンボル「瓢箪」の絵柄はTさんご夫妻だけでなく、この家に来る全ての人の健康を祈っています。

天井を四角く切り取り品よく3つ並んだ照明は格式ある旅館のような風情、スプーンカットの腰掛けは座り心地が柔らかく、スリット窓からの光が木目を印象づけます。ダイニングカウンターの天井は一部が高く木のルーバーで和モダンを演出、穏やかな時間が流れます。

二階の木の天井が見えるでしょ。
お向かいから見上げる夕暮れの外観が気に入っています(奥様)。
以前の住まいは築40年、床は浮き隙間風が入るため「最初はリフォームも考えたけど、補強するより基礎からやり直したほうが安心だ」と建て替えを決意したTさんご夫妻。発泡スチロールを用いた 「浅層地盤改良方法」の効果は基礎だけでなく住まい全体の断熱性能を飛躍的に高め、「冬は1階の床暖房だけで充分」(ご主人)とその性能を実感されています。 「リビングは何枚も図面を作ってもらったよ」とご主人。奥が小上がりのプランやキッチンが真ん中、2階リビングなどの提案の中から今の間取りに。「居心地がよくて、かっこいい家でしょう」というご近所さんの太鼓判から、Tさんご夫妻と新居の魅力が実感できました。

【外観】
Editor's Eye
お孫さんへのプレゼント「ハンモック」
近居のお孫さんたちはおじいちゃんが大好き。広いリビングはお孫さんの格好の遊び場で、普段は宿題をしたりゲームをしたり、食事やお風呂に入ることもしばしば。そこでTさんがサプライズでプレゼントしたのが「ハンモック」。狙いは大成功で、大喜びだったそう(写真提供長崎さん)
ギャラリー
間取り図
家づくりの流れ
- 2007年
- 娘さんの住まいのリフォームで長崎さんを知る
- 2009年
- 立て直しを検討
- 2010年
- 長崎さんに依頼
プラン検討 - 2012年1月
- 着工
- 2012年8月
- 竣工
お住まいのDATA
所在地:神奈川県川崎市
家族構成:夫婦
敷地面積:82.62m2(24.99坪)
建築面積:40.82m2(12.34坪)
延床面積:77.97m2(23.58坪)
工法構造:木造軸組工法
竣工年月:2012年8月
取材後記
Tさんご夫妻はもちろん、ご近所の皆さんの人間力がとても高くて、本当に魅力的な界隈です。打合せの最中、気付いたらお向かいのご主人が参加していた、なんてこともありました。暮らしが家の中だけに収まらず、外にまではみ出して、通りがご近所のリビングのように機能する。これぞ向こう三軒両隣のお手本のような暮らし。地縁が薄くなった昨今珍しく、伺う度にとても羨ましく思います。耐震補強の相談から始まったTさんの家。たくさんの検討を重ねて新築建替えを選択されました。何よりのご褒美はTさんご夫妻の元気な笑顔。今回もTさんご夫妻の明るく張りのある声にとても勇気を頂きました。建築家とは施主に育てられる職能だと改めて初心に還ったひとときでした。
今年も多摩川花火、楽しみです。