暮らしに会いに
10年経って「住み心地はどうですか?」建築家と建てた住まいを訪問
  • 10年経っても変わらないモダンなデザインと
    極上の白が美しい、大人のための家

  • 川崎Sさんの家
  • 設計:前川哲建築設計事務所
  • 撮影:花岡 慎一
リビング
住宅密集地に建つため、外に閉じ内に開いた間取りの2階は、真っ白な床と大開口の窓が目を引く。ガラスにしたことでテラスとリビングが繋がり開放的。

生活感を感じさせないデザインは、シンプルで機能的、そして明るくてのびやか。大人の贅沢な時間を楽しんでいます

建てた時より家がずっと生き生きとしている――前川さんが肱しそうに見つめる先は、外に閉じ中に大胆に開いた広いリビングに半戸外で繋がるテラス。輝く白と開放感に満ちたシンプルモダンのSさん邸、築10年のお住まいです。
3.3mの天井高に大きな窓で「陽当たりがいいからどんどん大きくなった」グリーンが美しくレイアウトされた空間はリゾートホテルのよう、ソファやテラスで寛ぎながら「昼間は雲の流れを、夜は星空を楽しんでいます」(Sさん)。“真っ白な2階”を提案した理由は第一印象から、と前川さん。「Sさんが自由でかっこよい方だったので、ご本人が映える空間を、と考えました」。
光が溢れるキッチンには食器や調理器具に洗濯機まで隠す大容量の収納が。「お友だちと横に並んで料理してもぶつからない」動線は動きやすく、10人以上のゲストがきても「いつもきれいに保てます」(Sさん)
バスルーム
マリンブルーのタイルとガラスの扉がアクセントのパウダールーム。
「お風呂から星や月が見えるんです。間取り図などでは分かりませんでしたから、
気付いたときには嬉しかったですね」

螺旋階段のやわらかいデザインが好き。
視線が抜けるような家を希望したら
光と風がちょうどいい感じに入って
とても気に入っています。

1階はコンクリート造の特徴を生かしたもう一つの大人の空間。黒みを帯びた赤の床やコンクリートのグレー、間接照明にマリンブルーのタイルなど独特の配色の理由は「螺旋階段を登り切った時、一瞬ホワイトアウトのような“わっ”という白と光のインパクトを楽しんでもらえるように」(前川さん)、1階と2階をあえて統一せず変化を楽しめる企みで、竣工後にテレビ番組が取材に来たほど。
子育ても終わり家族それぞれのライフスタイルが確立する時期に建てたのも良かった、とSさん。“生活感を出さない”“大人のための家”の暮らしは「10年問ずっと決適です。リラックスできるし会話も楽しめる。これからも大切にします」。
Editor's Eye

母が日光浴を楽しめるように

隣家とは白い壁、室内とは全面ガラスで仕切られたテラスは、息子さんの「母が日光浴が楽しめるように」というアイディアから生まれた。昼問は読書や音楽、夜はゆっくりお酒を楽しむことも。また夏はお孫さんがプールを楽しんでいる。

間取り図

間取り図

家づくりの流れ

2004年
家づくりを検討開始
2005年
前川さんと知り合う
2005年4月~11月
基本設計
実施設計
2006年2月
着工
2006年10月
竣工

お住まいのDATA

所在地:神奈川県川崎市
家族構成:本人+子ども
敷地面積:143.53m2(43.4坪)
建築面積:75.98m2(23.0坪)
延床面積:134.98m2(40.8坪)
工法構造:木造軸組工法+RC造
竣工年月:2006年10月

取材後記

写真左から建築家前川さんとSさん

竣工してから幾度かお邪魔させていただく機会はありましたが、今回は築10年も経つことに驚きながらの、少し間が空いての訪問でした。ゆとりある空間での暮らしをイメージしていた二階へあがると、雑々とした街の喧騒から離れて、時間を忘れて過ごせる空間が広がっていました。
10年も過ぎると設計時の苦労はところどころ忘れているもので、建物をゆっくり見返して、我ながら色々と工夫をしたものだと当時の自身の設計を振り返りながらの取材撮影となりました。家族構成、部屋の使い方や経年の変化もありましたが建築の本質的な居心地のよさは変わらず、大事に住んでいただいていることを実感する滞在でした。Sさんの暮らしと建物がうまく馴染んで、竣工時よりも良い空間になっている。いい家を設計させていただいたと、改めて思いました。