暮らしに会いに
1年経って「住み心地はどうですか?」建築家と建てた住まいを訪問
  • どこか懐かしい土間と縁側でくつろぐ時間が楽しみ。
    子育て夫婦の想いがつまった、2.5階建ての都市型住宅

  • S区Sさんの家
  • 設計:中尾英己建築設計事務所
  • 撮影:花岡 慎一
リビング
【リビング】 Bo Conceptのソファなど基本的な家具は以前からの愛用品。その色や素材感に合わせてテレビボードやスタディコーナーを造作。
階段の踊り場に作った収納と棚は「ちょっとしたところにも中尾さんのアイディアを感じます」。家族の写真や小物を飾る楽しみも

縁側に座っておしゃべり、ごろりとお月見。珪藻土を一面に塗った壁に差し込む光やどこにいても声が聞こえる安心感に、ほっとします(奥様)

ボックスが重なったような、シンプルな外観を一歩入るとウサギのシルエットがお出迎え。足に心地よい那智の玉砂利の土間に、おしゃべりが弾みそうな縁側、その頭上には10m超の吹き抜け、さらに重厚感あふれるストリップ階段の段板はゴムの木の集成材。ダイナミックながらどこか遊び心と日本の原風景を感じさせるこの家は、2人のお子さんを育てるSさん夫妻の住まいです。
防火地域で木造だと最大100m2という延床面積制限を感じさせない広さの理由は、2.5層という高さと仕切りが少なく視線が広がる「目通りのいい」設計。「子どもが部屋に寵らず、家族の気配を感じやすい間取り」を希望しつつ「個室は必要だけど、いつかは独立するからコンパクトで、扉も引き戸に」(奥様)。
LDK
【LDK】 対面式のキッチンからリビングが一望できる。キッチンの背面は造作の全面収納。
「炊飯器からの蒸気を逃がすように、上の棚は少しだけ引っ込んだ
デザインにしてもらっています(キッチン写真参照)」(奥様)。
お子さんもお米研ぎなどでお手伝い
デザインは「年月が経って古びてもそれが味になるようなもの」(ご主人)を要望、外観と階段横の珪藻土の壁は「やさしい感じの色」で、端正なデザインの中にご夫妻の住まいへの考え方が反映されています。

中尾さんがテレビにも出ている建築家と知ってびっくり(笑)。
でも、予算内で自分たちの要望を工夫して考えてくれて、楽しかった記憶しかない(ご主人)

「子ども部屋が必要になる頃までには、家を建てたい」と思っていたSさんご夫妻。「実家の縁側が便利で。座ったり、ご近所さんと交流したり、外と中が繋がっている土間も欲しかった」奥様はネットで検索し、中尾さんに辿り着きました。「実はテレビや雑誌に出ている方と知ってびっくり。受けてもらえるのかと不安に(笑)」。でも「毎回2時間ほどの打ち合わせが楽しみで、こちらの要望に中尾さんがどう返してくれるか、どんな案が出てくるか、わくわくしていました」(ご主人)。東京のど真ん中の「月が見える特等席の縁側」では「虫の声も聞こえるんですよ」。屋上ではテントを張って、スカイツリーを見ながらプチキャンプ。住まいが感受陛や創造力を育てる力を持っていることに、改めて気づかされました。
【ルーフテラス】 施工途中でフラットテラスに変更したことでBBQなどゲストを招いても十分な広さに
Editor's Eye

10mの吹き抜けでも蓄熱式床暖房だけで「あたたかい」

「吹き抜けなので蓄熱式床暖房を提案」した中尾さん。実は敷地が防火地域のため「住まいは壁も厚く断熱陛能が高い準耐火仕様なので、蓄熱式床暖房の性能が最大限になることは計算済み」。立地条件をメリットに変える設計、結果は「冬でもこれだけで充分あたたかいんですよ」(奥様)

間取り図

間取り図

家づくりの流れ

2008年頃
家づくりを検討
2012年6月
中尾さんに出会う
2013年5月
土地契約
中尾さんと契約
2014年4月
着工
2014年11月
竣工

お住まいのDATA

所在地:東京都S区
家族構成:夫婦+子ども2人
敷地面積:105.32m2(31.85坪)
建築面積:56.46m2(17.07坪)
延床面積:98.95m2(29.98坪)
工法構造:木造軸組工法
竣工年月:2014年11月

取材後記

写真左から建築家中尾さん、S様奥様とご主人

竣工してからまだ一年(取材当時)ですので、今回お引き渡し後、初めてお伺いしました。取材が進むにつれ、最初に購入を検討した土地は諸事情でキャンセル、現在の敷地はインフラが課題で一筋縄ではいかなかったこと、基本設計にはこんな案があった、概算見積りは細部までチェックしたなど、いろいろな出来事がフラッシュバックしてきました。Sさんの家は、そうそう、ここはこんな打ち合わせから決まっていったんですよね、と記隠を辿るのが楽しくなるプロジェクトでした。実際に住まわれているのを拝見させて頂き、住宅と同じように伸び伸びとご家族が暮らされているのがとても印象的でした。これから建物も経年変化し、さらにちょっと懐かしく落ち着いた家…、そんな風になるという感じがとてもしました。Sさん、ご協力本当にありがとうございました。