暮らしに会いに
約3年経って「住み心地はどうですか?」建築家と建てた住まいを訪問
  • 二人の感性で選んだものを一つずつ重ねて。
    ここはパリとNY、鉄とガラス、アンティークと映画の交差点

  • 大田区Jさんの家
  • 設計:小嶋良一 こぢこぢ一級建築士事務所
リビング

ウォールデコとアンティーク家具やインテリアで、
パリのアパルトマンのような大人の甘い空間を実現。
すこしずつ好みに育てる楽しさも(奥様)

海外の映画の1シーンに迷い込んでしまった・・・、そんな不思議な気持ちになるJさんの家は、隣家が迫る旗竿地に建つコンパクトな3階建てです。
映画が趣味なお二人がこだわったリビングでまず目を惹くのはウォールデコ。国内外で買い求めたアンティークの額縁や鏡、オブジェがセンスよく飾られています。縦長の窓も海外の住まいのイメージそのまま、2.7mの高さから光と風を招き入れます。イギリス製のゆったりとしたソファはキャスター付きの脚が印象的、床は幅広い無垢のオークが気持ちよく、ジェルデのランプやペンギンブックスのポスターに、ご主人こだわりの鉄骨階段と30センチ角のガラスブロックの壁が。そう、ここはパリとブルックリンが交差する、少し甘くてクールな空間です。
ダイニングテーブルの真上は高い吹き抜け
ダイニングテーブルの真上は高い吹き抜け。パリの屋根裏のような天窓から自然光が降り注ぎます。
まだ築3年ですが、どれもがずっと前からそこにあるような、とてもしっくりくる感じ。「この家に合うものを探すのが楽しくて」、でも「私たちらしい家に育てている途中なんですよ」(奥様)。
【キッチン】 食器やトースターなどは市販の収納を組み合わせた棚に。

NY、ブルックリンの硬質な空間が好き。
存在感のある鉄骨階段と、ガラス、木といった異素材の融合が気に入っています(ご主人)

Jさんご夫婦が建築家選びで重視したのは「気が合うかどうか」(ご主人)。一方の小嶋さんは「間取りや動線よりも、好みの家具や小物から発想した空間設計の必要性を感じました。質感や空気感に徹底的にこだわりました」。深夜までの打ち合わせは「ほとんどインテリア談義」(笑)で、階段横の手すりをガラスブロックにしたらという奥様のアイデアから今は廃番になったメガガラスブロックに辿り着き、柱もH鋼にしてブルックリンのイメージをベースにしたオリジナルの空間を作るなど、随所にお二人の世界観を実現するための工夫が。
旗竿地ゆえの細長いアプローチは、お二人だけの映画のような空間への入り口。造作の玄関扉の向こうでは、今日も静かで穏やかな時間が流れています。
【リビングと階段】
Editor's Eye

センスが問われる“ウォールデコ”の成功例

ウォールデコのスクラップブック
奥様が用意したウォールデコのスクラップブック(写真)。小嶋さんは雰囲気を真似るのではなく、本物をつくりたい、というお二人の熱意を感じた」そう。洗練されたセンスに溢れる壁が出来上がったのは竣工して一年後。いつまでも眺めていたい空間だ。

間取り図

間取り図

家づくりの流れ

2009年
家づくりを考える
2011年7月
気に入った土地が見つかる
2011年10月
土地購入
2011年11月
雑誌の記事で小嶋さんを見つける
2011年12月
小嶋さんと契約
2012年1月
実施設計
2012年5月
着工
2012年9月
竣工
引渡し

お住まいのDATA

所在地:東京都大田区
家族構成:夫婦
敷地面積:73.43m2(22.25坪)
建築面積:33.99m2(10.30坪)
延床面積:90.75m2(27.50坪)
工法構造:木造軸組工法
竣工年月:2012年9月

取材後記

集合写真
写真左から 建築家 小嶋さんとJさんご夫妻

年に2、3度お邪魔しているJさんの家。今回の訪問は半年ぶりです。インターホンを押そうと門を前にしたとき、目の前の光景に驚かされました。玄関へと続くアプローチが、いつの間にか緑の小径になっていたからです。竣工時に植えたモッコウバラが今夏ようやく緑の塀へと変わり始めたようです。中へ上がり近況を伺うと、探していたアンティークの本棚をやっと見つけたこと、門扉の塗装を自分たちで塗り直したこと、そろそろ植栽の剪定を考えていること、等を楽しそうに話してくださいました。「愛着を持ちながら経年変化を楽しむ暮らし」。僕が目指す理想の暮らしがそこにはありました。
これからもJさん夫婦と共に、この家が年月を重ねていく姿を見届けていきたい。改めてそう感じる取材でした。Jさんご協力ありがとうございました。