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春が近い皇居端
2018.3.17
津野 恵美子

こんにちは.津野建築設計室の津野です。

今日桜の開花宣言が出ましたね!急に暖かくなったあと、いつもの花冷えでしばらく肌寒い気温が続くようですが、やはり桜が咲いたと聞くと、自然とうきうきしてきます。

今日は、お堀端に散歩がてら東京都近代美術館の熊谷守一展に行ってきました.

東京都近代美術館は、巨匠谷口吉郎さんの傑作建築。青い空に近代建築の力強いラインがはえます。

そして熊谷守一も、明治生まれの近代画家の巨匠。赤い輪郭線と、高度に単純化された画風が有名な画家ですが、まとめてみるのは初めてでした。

ポスターの猫も、シンプルでグラフィカルな構図なのに、柔らかい寝息まで伝わってきそうな生々しさがあって、暖かさやユーモアと一緒に、ものの本質を見逃さない、ある種の冷徹な目の強さを感じます。

「輪郭線」というのは実際には存在せず、私たちはものの輪郭を明度差や光によって見分けているのですが、熊谷守一も、近代洋画家らしく、当初は荒いタッチで面を塗り分ける形の油絵を描いていましたが、当初から興味を持っていた物と光の関係を追求していく中で、徐々に対象を単純化していきます。

建築でもよく「線を消す」デザインという言葉が使われます。空間の中に出てくる、窓枠や巾木といった要素をそぎ落としていく形で、見えてくる「線」を減らし、シンプルで美しい空間を作るという考え方です。とはいえもちろん線を消せばいいというわけではなく、空間として求められる機能や要素を満たした上で、本質的に必要ではない「線」を消さなければ、竣工当初はきれいでも、生活していく内に汚れたり、別の線が増えてしまったりして、本末転倒なことになります。

熊谷守一のシンプルな構図の中にも、輪郭線の細太、太さの変化、赤の色味、刷毛の線の太さや筋目の向きなど、画家が対象の本質を描くにはなにを捨ててなにを残すべきか、驚くべき緻密さと執拗さで、何度も繰り返し試したり研究したりした姿勢が見えてきました。

97歳の人生をひたすら己の絵と対象に対する視線を追求した人世。アーティストと建築家は求められる職能は異なりますが、見習うべきところの多い展覧会でした。

近代美術館の魅力は豊富で質の高い所蔵品ですが、222の猫の日の流れで収蔵品「猫オリエンテーリングマップ」も楽しくて大満足。

外に出るとソメイヨシノはまだですが、コブシや枝垂れ桜、椿のぽってりしたピンクや赤みの強い桜(不調法で種類がわかりませんが、写真を見てわかりますか?)がところどころで咲き始め、柳の新緑も柔らかで、春の盛りの一歩手前のよい景色。

満開の桜も大好きですが、それに心を奪われてソメイヨシノ一色の風景になってしまうので、今の時期の「春探し」も気持ちのいいものですね。

そして事務所に帰って、ミュージアムショップでついつい買い込んだ、猫成分多めなおみやげを本物の猫が検品。

実物の猫を前に見ると、あらためて熊谷守一の線の確かさに感服します。

春一歩手前のよい週末でした。